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牟田鉄工有限会社
 
 
 
 
 
 
2021/8/11

ウレタンローラーシャフト折損修理②溶接+加工

大至急での修理となったウレタンを巻いたコンベアプーリー軸。
 
 
予定していた軸の抜き替えは不可能になったので軸に新しい軸を継ぎ足す方法しかありません。
 
簡単に言えば『新しい素材を溶接でくっつけて旋盤で削るだけ』なのですが、ウレタン部と軸の折損箇所の距離が近すぎる為に大きな問題が2つ出ました。
 
 
問題その①:溶接時の熱でウレタンが溶けてしまう。
問題その②:そもそも現物の軸は材質的に溶接時に予熱・後熱が必要だった
      =ウレタンが溶けてしまう。
 
 
①から見ていくと、溶接する際、直接溶接している部分は当然めちゃくちゃ熱くなるのですが、その周辺も溶接部の熱の影響をもろに受けてかなり熱くなります。
 
素肌が当たると皮膚が一瞬でやられてしまう位の熱さです(^^;)
 
何も対策無しに溶接するとウレタンが溶接の熱で溶けてしまうので溶接中は冷却しながらになります。
 
しかし②では、軸の材質を硬度計等で調査すると溶接時は予熱・後熱を必要とする材質だったことが分かったので溶接中は常に熱が加わった状態が必要となります。
 
つまり、ウレタンの事を考えると冷やしながらの溶接、軸の事を考えると熱を加えながらの溶接という難しい状況になりました(^^;)
 
 
接合部がウレタンと離れていたら気にしなくて良かったのですが・・・とにかく早急に修復するしかないのでトライします!
 
素材と軸に溶接前加工を行い、治具を作ってウレタンが熱影響を受けにくいようにし、溶接中は職人さんに冷却を手伝ってもらいながら予熱・後熱を行って必死に溶接を実施! 
 
 
無事溶接完了!!
ウレタンの溶けと軸の割れはありませんでした(^^)/ 
かなり難易度が高かった今回の溶接。パッと見は何の事は無いですが、実は目に見えてない部分で経験と知識をフル活用しています。
 
溶接中は常に温度確認を行い、冷却加減もウレタンが溶けない位のギリギリの温度を勘で狙い職人さんと息を合わせながら慎重に溶接しました。
 
 
溶接が終えればあとはスケッチ図通りに機械加工するだけなのですが、『そのまま旋盤でつかんで削る』という訳には行かず、ここでもひと手間かかりました(^^;)
 
 
オニブリ(オニブレ、鬼ブリ)を使ってセンター押し。
センターを押すだけで一苦労です(^^;)
オニブリを使ってセンター押し。
 
ウレタンの外径はテーパーが付いているのでまともには旋盤でチャッキングできません。
(そもそも傷が付くのでウレタン自体を直接つかめないのですが・・・)
 
軸端にセンターさえ押せれば加工が一気に進むので旋盤上で振れ止めを利用してセンターを押します。
 
ただ!
 
継ぎ足した素材に振れ止めローラーを直接当てる事はできないので、上の写真の様にリング(オニブレ、鬼ブレ、オニブリ)を間に入れてリングに振れ止めを当てる方法を取らないといけません。
 
このオニブレ。
 
新しく今回用に製作したのですが、溶接部の軸径や長さ、振れ止めローラーの形状、芯出し用のダイヤルゲージ当て部確保などを考えると全てにおいて余裕が無くて苦労しました(^^;)
 
またオニブレは芯出しを細かく調整しながら丁寧に作業しないといけないので、センターを押す為の芯出しだけで手間がかなり掛かります。
 
丁寧にオニブレ作業を行い、センター押し、その後の外径加工を実施。
 
 
オニブレをそのまま利用して軸の外径加工完了!
オニブリを利用して細長い軸の外径加工。
 
現物軸との食い違いは全く無くキレイに繋がりました(^^)/
 
旋盤加工後は軸にキー溝加工をフライス盤で実施。
 
 
フライス盤でキー溝加工。
狙いの寸法公差で加工完了! 
軸に平行キー用のキー溝加工をフライス盤で実施。
 
これで機械加工完了です!
 
後は手入れと調整を行えば修理完了となります(^^)/
 
溶接から加工まで、単純な内容ではありましたが難易度はかなり高かったです(^^;)